肉屋になりたい
上:『うちは精肉店』写真・文:本橋成一(解放出版社)。フォトグラファーの本橋さんは『屠場』という写真集も出しています。モノクロで屠畜場を撮影しています。
肉屋になりたい、と夢想していた時期があります。
精肉と自家製の肉加工食品を売るお店です。
鶏、豚、牛だけでなく、鹿やいのしし、熊の肉なんかも扱いたいですね。
日本での牛肉の等級のつけ方は「歩留まり等級」「肉質等級」に分けられるそうです。
よく「A5」が最高ランクと言われますが、「A」が歩留まり等級、「5」が肉質等級をあらわしています。
歩留まり等級はその名の通り、同じ体重の牛を比べたときに、より多く肉がとれるほうを良しとします。
肉質等級は「脂肪交雑」「肉の色沢」「肉のしまりときめ」「脂肪の色沢と質」の4点で評価されます。
「脂肪交雑」は「サシ」の入り具合ですね。
どういうエサやどういう環境で育ったかは評価されません。
エサや環境は肉質にあらわれる、という考え方なのでしょう。
魚介なら「天然」と「養殖」と選べます。
野菜なら「自然栽培」「有機栽培」「慣行栽培」と選べます。
精肉は「●●牛」、「並」「上」「特上」、「国産」「外国産」という選び方になります。
わたしは、肉の歩留まりやサシの入り具合より、どういうエサやどういう環境で育ったのかが気になります。
そういうところにこだわって肉を並べる精肉店があってもいいんじゃないかなー、と。
というか、わたしが肉が好きなので、そういう肉を食べたいということが一番大きいですかね。
あとは、家畜を解体していく作業が、すごくかっこいいこともあります。
前の仕事で『絵本 いのちをいただく』(講談社)という絵本を担当しました。
熊本県で食肉解体のお仕事をされていた坂本義喜さんの実体験をもとにした絵本です。
同時期に写真絵本として出て、ドキュメンタリー映画にもなった『うちは精肉店』(農文協)も素晴らしかったです。
感動して、大阪の北出精肉店に電話してお肉を注文してしまいました。
食肉解体は、一朝一夕では習得できない職人技が詰まったすばらしい仕事です。
作家・佐川光晴さんが実体験を書いた『牛を屠(ほふ)る』(解放出版社)を読むと、そこらへんが非常によく伝わってきます。
わたしが幼いときに見た、肉屋のバックヤードに大きな枝肉がぶらさがる光景は、今は珍しくなっているのかもしれません。
今は、部位ごとに真空パック詰めされているものを卸で扱っていて、小売店はそれを買うそうです。
東京でよく愛用していた肉屋さんがそう言っていました。
「牛すね肉をそのままください」というと「日山」という有名な精肉卸・小売会社の名前が入った真空パック詰めを渡されていたのを思い出します。
真空パック詰めは扱いやすいですが、外に出た血が肉に密着した状態が続くのであまりよくないんだ、という方もいました。
牛、馬、豚、やぎ、羊は指定の屠畜場で屠畜しなければならないと法律で決まっています。
食用に適しているかどうか検査をしなければならないからです。
にわとりやあひるについてはまた別の法律があります。
ただ、自家消費のために家でにわとりを絞めてさばくのなんかは、問題ありません。
うちも以前、よそのお宅でにわとりを絞めるのを体験させてもらいました。
羽をむしるとものすごい量になるんです。
そして、身は引き締まっていて筋肉質。
肉の量はかなり少ないです。
ブロイラーは肉を最大限とれるように改良された品種だというのがよくわかりました。
肉食については、賛否両論ありますね。
わたしは、自分の味覚の原点に肉が刻印されているので、食べないという選択肢はありません。
母の実家のおとなりが精肉店だったので、肉をよく食べていました。
(海沿いの町で、祖父の晩酌用に魚も毎日のように食卓にあがっていましたが)
母は幼いころ、おやつとして、ゆでた牛テールにウスターソースをかけたものを食べていたそうです。
焼き肉屋さんに行けば、カルビ、タン、ミノ、センマイ、ホルモン(大腸)を食べます。
ロースをはじめて食べたのは18で東京に出てきてからです。
今でもロースにはあまり食指が動きません。
鮮度と質のよい内臓のほうがうれしいですね。
鶏肉もよく食べました。
硬いけど味が濃いもも肉(親鳥)を炭火で焼いたものが大好物でしたね。
大分県は、鶏肉の消費量が全国一だそうです。
おっと、肉について語りだすと止まりません。
先ほどあげた絵本2冊の、それぞれの主人公である坂本さんと北出さんが、8月2日に京都で対談&肉をさばく実演をされます。
わたしにとっては、夢のタッグです。
長男と行ってくる予定です。
これはまた、後日レポートをあげますね。
お楽しみに。