一汁一菜でよいという実践

信州のめぐる四季のなかで食と食まわりを坦々と記録する日々。余裕のない日は一汁一菜以下、そうでない日はそれなりに。

自分で酵母を起こすおもしろさ

パンづくりについて過日投稿しました。

相変わらず、週1~2回、1回あたり4~6斤ペースで焼いています。

 

 

ichijyu-issai.hatenablog.com

 

 

パンづくり、わたしの実感では「おおむねお菓子作りより取り掛かりやすい」という印象です。

わたしが手を動かすのは「計量」「混ぜてこねる」「計量して分割」「成形」で、合計30分程度。

あとは生地が勝手に発酵してくれるし、オーブンがいい感じに焼き上げてくれます。

 

とはいえ、酵母の元種づくりなどは、前回の投稿だと「ハードル高っ」と感じた友人もいたようで、もうちょっと丁寧に書いてみることにします。

 

 

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写真:この日は計6斤焼成。水分を牛乳だけ、水だけなど気分によって変えています。ピースサインは長男の手です。

 

 

 

自家製酵母のメリット

なんといっても、香りと味がよいことです。

とはいえ、パンの味は酵母だけで決まるわけではないので、絶対の条件ではありません。(このへんは、シニフィアン・シニフィエの志賀さんの本に詳しく書かれています)

何で起こすかによって風味も変わってきます。

あくまで一般的にという話です。

 

単純におもしろい、ということもあります。

「これでこんなふうにパンができるんだー!」と感心感激する気持ちは色あせず、飽きません。

感覚的には、生き物を育てるとか、実験するとかに近いですね。

うちでは“四男坊”と呼んでいます。

四男坊に元気がないと、とたんに心配になります。

 

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写真:手前が一次発酵を終えた生地。こんなに膨らむんですー! この時点で香りも抜群。奥は酵母液です。 

 

 

 

自家製酵母のデメリット

パンづくりにすぐに取り掛かれない!

最低でも酵母液を作らなければパンは作れず、それに1~7日かかります。

(とある酒粕で、新鮮なうちなら直接混ぜても発酵するものもありますがごく例外です)

そのあと元種となると、さらにプラス1~7日。

 

しかも、まったくはじめてとなると、成功するまで数回失敗するのはよくあること。

「場ができる」とわたしは表現していますが、酵母が起きやすい環境をつくるために最初の数回は失敗作が必要になる場合があると、以前通っていたパン教室の先生が言っていました。(そのパン教室はレーズン酵母でした)

 

ちょっと話が逸れますが、今は発酵に必要な菌(酵母)は化学培養したものが大半です。

化学培養の技術がなかった時代は、蔵元の梁や壁に棲みついた菌が発酵に役立っていました。

だから、昔ながらの蔵元は、今の感覚でいうとけっこうばっちく見えます。ピカピカに掃除してしまうと菌がいなくなるからです。

醤油や味噌づくりに木桶がよいというのも、表面がステンレスやプラスチックのようにつるっとしていなくて菌が棲みつきやすいからではないでしょうか。

ちなみに、以前取材で訪れた福井県は永平寺の漬物蔵は、見た目ばっちくて発酵臭も強烈でした。

 

酵母たちがじゅうぶん働けるように、その空間に棲む仲間を増やしてあげるというイメージですね。

 

いざ酵母が起きてからも、腐敗する場合があります。

なので、はじめるなら寒い時期がおすすめです。

暖かい時期は酵母がすぐ起きてくれてよいのですが、過発酵になって失敗しやすいとか。

わたしも7~8月あたりは一旦パンづくりをお休みしようかと考えています。

  

あと、自家製酵母はイーストに比べて発酵がゆっくりめなので、トータルの時間はかかります。

わがやで今の季節なら、一次発酵に6~7時間、二次発酵はオーブンの保温機能を使って1時間程度です。

 冬場は、夜8~9時頃にこねて、朝6時まで放置でちょうどでした。

 

 

 

酒粕酵母のメリット・デメリット

イチから起こすというより、すでに酵母などがたっぷり入った酒粕を使うので起こしやすいと感じています。

また、アルコールが含まれているからでしょうか、腐敗にも強そう。

はじめての方にも起こしやすいかもしれません。

 

できあがったパンは、チーズのような乳酸発酵の香りがほのかにします。

 

デメリットとしては、酒粕が出る時期しかできないという点でしょうか。

 

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写真:現在使っている酒粕は、寺田本家の「自然酒酒粕(板粕)」。発酵力が強く、風味もいいと感じます。今の時期だけしか出ません。この時期以外は、わりと通年である「醍醐のしずく酒粕」「発芽玄米酒粕<にぎり酒>」を使います。

 

www.teradahonke.co.jp

 

 

 

元種づくり

元種づくりを紹介していきましょう。

ちなみに、わたしが参考にしているのはこちらの本。

 

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『ポリ袋でかんたん! 甘酒&酒粕でつくる天然酵母パン』著:梶晶子(河出書房新社)

 

 

Step1.まず酵母液

ちぎった酒粕に、水を4倍量入れて放置するだけです。

ホントです。

 

酒粕50gに水200gあたりがはじめやすいでしょうか。買ったばかりの酒粕を使ってください。

入れるのは清潔なガラス瓶がおすすめです。(煮沸消毒すればなお安心)

 

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写真:放置1日目の状態。酒粕が水になじんで、水が白濁してきています。

 

 

ガスが出てくるので、フタはゆるめにしめておきます。

暖かい場所に置いて、1~3日ほどで起きます。(冬は1週間くらいかかる場合も)

完成の目安は、酒粕がすっかりほぐれて、元気よく泡が出ている状態。

 

 

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写真:冷蔵庫で保存している完成版。酒粕はモロモロになっています。

 

見た目静かでも、ちょっとゆすって泡が出てくるようならだいじょうぶです。

完成したら、冷蔵庫で保存してください。(半年ほどもつそうです)

酒粕は沈殿してしまうので、使うときはかならずよく混ぜてくださいね。

 

 

Step2.いざ元種へ!

元種づくりは同じことを3~7回繰り返します。

すごく簡単です。

ホントです。

 

【1回目】

別のガラス瓶に、「酵母液」(よく混ぜてすくってね)と「強力粉」を大さじ2ずつ入れて軽く混ぜます。

これもフタはゆるめに。(本では新品のシャワーキャップ推奨)

混ぜたもののいちばん上の位置にしるしをつけておいてください。(わたしは剥がしやすいマスキングテープを使っています)

暖かい場所に置いて、高さが2~3倍になるまで待ちます。(夏場なら4~5時間、冬場なら12~24時間が目安)

 

【2回目】

また酵母液と強力粉を大さじ2ずつ加えて混ぜて、いちばん上の位置にしるしを。

同じように暖かい場所に置いて、2~3倍の高さになるまで放置します。(本によると1回目より時間は短くなります)

 

というのを、合計3~7回繰り返すのです。

これを「掛け継ぎ」といいます。

 

掛け継ぎは3回でも十分ですが、パン教室の先生いわく、より味に深みが出るので5~7回は繰り返してほしいとのことでした。

都合と好みでよいと思います。

 

終わったら冷蔵庫で保存してくださいね。

使い切ってもいいし、ずっと使い続けたければ、1週間に1回ほど掛け継いであげればOK。

 

今のわたしは、こんなふうに大きな容器に入れています。

1回に掛け継ぐ量も、酵母液200g+強力粉150g(ゆるめにしています)と多め。

食パン2斤で元種を250g使うので、量が必要なのです。

 

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写真:ぽつぽつ穴が開いているのがわかるでしょうか。酵母が元気に活動しています。蓋にマスキングテープをはり、そこに掛け継いだ日と分量を書いておきます。


……こんな感じです。

いかがでしょうか。

 

最初はストレート法で作ってみて、感触がよければ元種法に進んでみてもいいかもしれません。

 

いずれにしても、「失敗してもいいや!」という気持ちでやってみるのがよさそうです。

 

わたしも慣れないうちはおっかなびっくりで、成形のときに生地をいじりすぎて「膨らまなかったらどーしよー(涙)」なんて不安になっていました。

そんなに繊細なパンではないためか、意外にだいじょうぶだったので助かっています。

 

目下の悩みは……やたら食べ盛りの双子さんたちがみるみる食べるもんで、以前と比べてパンの消費量がかえって増えてしまったことでしょうか。

「おいしい、おいしい」と食べてくれるのはうれしいけれど、強力粉を2週間で5kgも買う生活になるとは思いもよりませんでした。

悩みというより、うれしい悲鳴ですかね。